お問い合わせ

採用募集中!

2015.02.03 最近のニュースに私的コメント

インドネシアとダーイッシュ

 イスラム国とイスラム教徒を区別するために、イスラム国をダーイッシュと呼びます。

 インドネシアは世界最大のイスラム教徒を抱える国であることから、インドネシアと何らかの関係を持つ多くの日本の人達は、ダーイッシュによる鈴木健二さん殺害の事件に際して、インドネシアは大丈夫だろうかと不安を抱えているものと思います。

 そこで、40年間インドネシアと関わって来た筆者の考え方を伝えることで、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

 先ず最初に間違えてはいけないこととして、インドネシア共和国はイスラム教国ではないと言うことです。2億5千万の国民の9割がイスラム教徒と言われていますが、憲法の上にあるインドネシア建国五原則でも信仰の自由が謳われています。

 確かに周囲のほとんどの人達がイスラム教徒であり、保守的な地域ではアルコール飲料が規制されているのも確かです。また、イスラム教徒の相手と結婚する場合はイスラム教の戒律に基づき、イスラム教徒に改宗することが義務付けられます。しかし、キリスト教徒やヒンズー教徒、そして仏教徒に対して、多数の力を背景にしてイスラムの教えや戒律を強制することはありません。

 世界のイスラム教徒は多数派と言われるスンニ派と、少数派と言われるシーア派に分かれてイスラム世界の主導権を争っています。スンニ派は預言者と呼ばれるカリフはムハンマドの子孫である必要は無いと主張しています。シーア派はムハンマドの子孫に限られると主張しています。双方の主張が妥協することは難しいでしょう。この主張の違いがアラブ地域の争いを複雑で根の深いものにしています。

 インドネシアのイスラム教徒のほとんどは比較的穏健と言われるスンニ派です。また、インドネシアにイスラム教徒の軍隊が侵攻して来るまでは、ヒンズー教や仏教、そして土着の宗教が浸透しており、その時代の名残がインドネシア独特の温和なイスラム文化を形成しているような気がします。

 しかし、悲しいことに10年前にはバリ島のリゾート地区で、イスラム過激派組織の自爆テロにより多くの犠牲者が出ました。この組織はジュマアイスラミヤと呼ばれ、東南アジアにおけるアルカイダの下部組織みたいなもので、その後もジャカルタの高級ホテルにおいて自爆テロを行いました。

 しかし、この10年間のインドネシア軍と警察による、徹底的な壊滅作戦が功を奏し、当時のようなテロ行為を実行出来る力はほとんど無いと言われています。実際のところ、生き残ったテロリストによる事件はたまに報道されますが、ほとんどは未然に防止されています。

 ダーイッシュに参加している、または参加を企てているインドネシア人が居るのも確かなようです。彼らがインドネシアに戻って来て、国内でテロ行為を行うことは否定出来ません。しかし、その可能性はインドネシアに限ったことではなく、世界中の国々で起こり得ることであり、イスラム教徒が多いからと言う理由で危険視するのは早計だと思います。この問題に対しては、日本人以上に、イスラム教徒が多いインドネシアの人達の方が真摯に対応しているものと信じています。

インドネシアビジネスサポート