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2017.11.09 コンサルタントの独り言

インドネシア進出支援は国益を損ねているのか?

 永年、中小企業のインドネシア進出を支援しているが、この仕事は日本人から仕事を奪うことになっているのではないか、ひいては日本のGDPを減らすことになっているのではないかと時々ふと考えてしまう。では、日本の国益、すなわちGDPを減らすことなく、そして日本の安全保障を損なうことなくインドネシアに進出するにはどうしたら良いのかを考えてしまうことがある。
 GDPは①民間最終消費支出、②政府最終消費支出、③総固定資本形成、④在庫品増加、⑤財貨・サービスの純輸出の合計である。またGDPにおける消費、生産、所得は三面等価の原則で同額となる。これらの理屈から言えるのは以下の様なことであろうか。
 先ず、①民間最終消費支出に対する影響であるが、インドネシアに生産の一部を移管するために日本の社員を解雇して、その人たちの所得が無くなってしまうとGDPを減らしてしまう。また、生産の一部を移管してそこで作られた製品を日本に輸入すると、生産の減少と輸入の増加による財貨・サービスの純輸出の減少でGDPを減らしてしまう。
 次に、③総固定資本形成に対する影響であるが、本来日本国内で設備投資すべき事業をインドネシアに持って行くとしたら、結果としてGDPを減らしてしまう。また、本来はその新しい事業のために日本の社員のために支出するばすだった人材育成投資も無くなってしまう。しかし、もしも日本製の設備を持っていく場合は財貨・サービスの純輸出がGDPを増やす。
 最後に、⑤財貨・サービスの純輸出に対する影響であるが、最初に述べたように、生産の一部を移管してそこで作られた製品を日本に輸入すると、生産の減少と輸入の増加による財貨・サービスの純輸出の減少でGDPを減らしてしまう。しかし、日本からの原材料や製品を輸出ための現地法人設立はGDPを増やす。
 また、インドネシアに進出することで、軍事、治安、衛生、食料、資源、技術、情報、公共インフラなどの安全保障の面でどのような影響を与えるのであろうか。
 一番懸念されるのは技術の流出と技能の消滅であろう。幸いなことにインドネシアでは今のところ、現地パートナーや現地企業により技術が丸々盗まれたという、中国や韓国で良くあるような話しは聞いていない。しかし、インドネシアに生産工程を移管したことにより、日本国内で伝承されるべき技能が消滅してしまった話はある。どのみち日本では伝承する若者がいないので、インドネシア人に伝承されただけでも良かったと考える会社もある。但し、これはインドネシアが非常に親日国家であるということが大前提としてある。
 さて、それでは日本の国益を損ねることなくインドネシアに進出する条件は何であろうか。上記のことから以下のように結論付けられるだろうか。
(1) 日本本社の仕事を減らさない。
(2) 設備と材料は出来るだけ日本から輸出する。
(3) 現地で生産された製品は出来るだけ現地市場あるいは第三国の市場で販売する。
(4) 技術移転や技能伝承は出来るだけインドネシア国内に留め、反日的あるいは親中的な第三国に拡大することは避ける。