調達部門の不正防止
以前、インドネシア国内での販売代理店候補を開拓している際に、ある知り合いから紹介された所を訪問した時のことです。案内されたのはジャカルタ郊外の狭い路地を入った小さな民家でした。そこの居間が事務所らしく、質素な応接セットには数人のインドネシア人が座って我々を待っていました。
早速、取り扱って欲しい商品の説明や取引条件についての話に取り掛かったのですが、彼らの着ている物がそれぞれ別々の日系企業の制服であることに気が付き、各自の所属を問い質したところ、やはり制服に付いているそれぞれの日系企業の社員であることが判り、それも全員が調達部門のマネージャーであると正直に打ち明けられて、一瞬何のことやら訳が分からなくなりました。
事情を聴いてみると、この会社は彼らが集まって作った架空の会社で、ここを通すことで落としたマージンを彼らが分け合うのだと正直に話してくれた時には椅子から落ちそうになるほど驚いた。さらに驚いたのは、そのことについて彼らの誰も罪の意識を感じていないことでした。これが日本であれば、『知られたからには生きては帰さないぞ』くらいになるかもしれないと思ったのですが、そのような雰囲気は全くなかったのです。こんなことをしていたら自分の会社に損失を与えてしまうだろうと言ったのですが、これはビジネスだと涼しい顔でした。
最近の事ですが、ある日系の合弁会社が合弁相手先の会社に所属しているやり手の調達担当社員に異動してもらうべく話をしたのですが、日系企業は納入業者からのバックマージンを自由にもらえないから嫌だとはっきり断られるという事態がありました。その時は上記のことを思い出して、さもありなんと諦めた次第です。
このようにお金が動くところには必ず不正の温床があるのですが、最大の温床はなんと言っても調達部門です。ここの担当社員と取引業者に対する牽制としては、日本人の責任者が時々アポ無しで訪問することです。もしも業者の数が多くてとても対応出来ないとしても、最初の取引契約の時と取引先を変更した時くらいは実際の現場を五感で確認することが大事です。
このように突然現場を視察することをインドネシア語でBlusukanと言い、現在のジョコウィ大統領がソロ市長とジャカルタ州知事の時に良く行ったことで、これで行政の現場がかなり真面目に仕事に取り組むようになったと言われています。