礼儀正しい紳士のAさん

生産部門のマネージャーをしていた東ジャワ出身のAさんは私より5歳くらい上の、スラリとした背の高い人でした。

私より年長でしたがそんな素振りは微塵も見せず、常に上司と部下の関係を守りつつ、温和な表情で接してくれました。

インドネシア人の部下に対しても決して偉そうな態度を取ることもなかったのですが、彼らに対しても少し間を開けて接しているようでした。

仕事の能力は飛び抜けて高いという訳ではなかったのですが、誤魔化しや不正は絶対にしないという信頼は揺るぎないものでした。

私は仕事でのインドネシア語を習得するために、意図的に自分でインドネシア語の書類や資料を作ったものでしたが、いつも間違いを直してくれるインドネシア語の先生でもありました。

結婚してから何年も子供が出来ず悩んでいましたが、治療を受けるようになって暫くして長男が出生れた時は本当に嬉しそうでした。

敬虔なイスラム教徒でしたが、日本人のことを良く理解してくれて、そのことをあまり意識させない、とても洗練された紳士という雰囲気を漂わせた人でした。

最新の頼りでは、定年後は故郷の東ジャワで家族と共に静かに暮らしているとのことです。