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2022.04.02 コンサルタントの独り言

『人間の大地』から想像出来るインドネシアの植民地社会

数年前にインドネシアの作家『プラムデイヤ・アナンタトゥール』の書いた『人間の大地』、原作はインドネシア語でBumi Manusiaを日本語訳で読みました。

全7巻の作品は第1巻だけがオランダ植民地政府に対するゲリラ兵士の家族の苦悩を描いた内容で、2巻以降は実在の人物をモデルにした言われる、スラバヤ生れの政府高官の息子の劇的な半生を描いたものでした。
この青年もオランダ植民地政府に反対する政治活動で最後は暗殺されますが、19世紀末の実在の人物も登場する、ノンフィクションに近い小説と言う印象を受けました。
第1巻の話はインドネシアで映画化されたので、出張の際にジャカルタのシネマコンプレックスで鑑賞して来ました。
ストーリーについて語るのは別の機会に譲りますが、300年続いたオランダによる植民地政策を終わらせたのは、大東亜戦争で東南アジアに侵攻した日本軍だけではなく、現地のインドネシア人(1945年の独立までインドネシアと言う国は無かったので、当時はオランダ領東インド)による反植民地運動の功績も大きかったということを知らされました。
生殺与奪の絶対的な権力を持ち富を奪取するオランダ人、オランダ教育を受け彼らを助ける王族と官僚の一族、イギリスの支配下で役人としての能力を身に付けて、インドから連れて来られ、現地人を監視するインド人の官吏と警察官、満州民族の清王朝に支配された支那大陸から逃れて来て、巧みに財を成す支那人、そして稲作の水田をヨーロッパに輸出して儲けるための砂糖黍畑に変えることを強制されて飢えに苦しむ農民。
主人公の青年はこの社会に新聞という武器で反旗を翻し、最後は命を落としてしまいます。
独立を果たしてからまだ僅かに73年。
300年続いた植民地時代の傷跡が消えるまでには、まだまだ長い時間が必要だと感じさせられた作品でした。