業務分野別の経験的アドバイス小話【情報システム編】
以下の小話は、作者が1981年から1995年の間、ジャカルタにあるヤマハの楽器工場で、生産課長そして工場長として駐在していた当時の経験や実例を基に、会社の業務または部門別に、日本人駐在員にとって役立つと思われることを書き出したものです。中には昔話になってしまった事例もあるかもしれませんが、インドネシアの良い面、悪い面を感じとってもらい、現地で仕事をする際のアドバイスになれば幸いです。
【ERPパッケージ導入の障壁は低い?】日本では1970年代頃から、業務を担当している人達もパソコンやオフコンの使い方を勉強し、自分達、すなわちオペレーターにとって便利な情報システムを開発しました。この方式は真っ白な大理石に自分達で彫り物をするような感じであるから『スクラッチ』と呼ばれています。これで作られた当時の個別最適な情報システムは『レガシーシステム』と呼ばれます。しかし、インターネットが爆発的に普及し、そしてY2Kと呼ばれて恐れられた2000年問題が、関係者の事前の努力により差ほど大きな問題もなく過ぎ去った直後、インターネットを活用したグローバル展開に対応出来ない(と言われた)レガシーシステムを、欧米の大手業務用ソフトウエアベンダーが提供する、ERPパッケージシステムに置き換える、いわゆるIT革新ブームに火が付きました。ところが、これらERPパッケージは会社によってことなる組織や業務フローとは関係なく、標準的なビジネスプロセスを前提に設計されているため、スクラッチ方式で作られたレガシーシステムに慣れた業務担当者にとって、自分の体型を全く無視した極めて着心地の悪い既製服でした。まして、日本では現場の声が重要視される『ものづくり文化』が根付いているため、いまだにERPパッケージの導入に苦労している事例が多く見受けられます。インドネシアでは日本ほどこのようなスクラッチ・レガシーや、現場重視の障壁が高くないので、ERPパッケージの本来のメリットを活かしたIT導入が期待出来ると考えている次第です。