業務分野別の経験的アドバイス小話【人事労務編】
以下の小話は、作者が1981年から1995年の間、ジャカルタにあるヤマハの楽器工場で、生産課長そして工場長として駐在していた当時の経験や実例を基に、会社の業務または部門別に、日本人駐在員にとって役立つと思われることを書き出したものです。中には昔話になってしまった事例もあるかもしれませんが、インドネシアの良い面、悪い面を感じとってもらい、現地で仕事をする際のアドバイスになれば幸いです。
【採用試験用紙の不足で騒ぎ】通りの向かい側の工場正門周辺で、大勢の若者が集まって騒いでいました。事情を確認したところ、ワーカーの募集広告を新聞に掲載したところ、定員の100倍くらいの応募者が押し寄せ、会場には入らないし、試験用紙は足りないで、会場はパニック状態になっているとのことでした。自社の幹部スタッフからは、ワーカーの募集は新聞に載せてはいけないと、以前から言われていたのですが、いざ目前にして納得しました。
【組合対応はインドネシアの文化に沿って】インドネシアの人達が大事にすることに、ムシャワラ・ムファカット(話し合いによる意見の一致)という文化があります。当時は労働組合活動が制限付きで解禁となり、私のいた工場でもその動きが出始めました。しかし、いきなり組合を作ると言っても従業員の中には経験者がいる訳がなく、それでは準備段階として経営者側と従業員代表からなる、二者協議会を設立することになりました。そこでお互いの思いを、ムシャワラ・ムファカットを通じて確認し、2年くらい経過したところで社内労働組合を設立しました。その後も労組関係は大きな問題もなく続いているものと思います。テレビニュースでは労組の結成を妨害した会社側と従業員との、暴力的な対立に発展した事件が時々報じられています。慎重に対処しなくてはいけません。
【会社への帰属意識】一般のワーカーにとって年一回の家族を含めた社内旅行やスポーツ大会は、現在の日本人が想像も出来ないほど楽しい、そして待ち遠しいイベントだと痛感しました。ある年に、諸事情からそれまでのイベントを中止することになった時の従業員の落胆は予想をはるかに超えたものでした。イベントの時の家族に対する得意満面の笑顔を思い出すと、多少無理をしてでも継続すれば良かったのにと後悔しています。