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2013.02.27 出島『海外ビジネスコラム』原稿

インドネシアで仕事をする時の小話的アドバイス 【牛乳で労災軽減?】

 塗装や接着加工を委託していたある外注工場を訪ねたときのことですが、もうもうと煙る塗料の霧の中でスプレーガンを操っている作業者を目にしました。もう少し作業環境を良くしないと体を壊すのではないかと、そこの社長に意見したところ、彼には毎日2回牛乳を飲ませて体力を着けさせているから大丈夫、との脳天気な言葉が返って来ました。逆に、日本企業は安全衛生や福利厚生にお金をかけ過ぎだ、とも言われてしまいました。

 残業が終わって帰宅する従業員が『今日は残業で疲れたから帰りにナシゴレン・スペシャル(特製焼き飯)を食べよう』と話しているのを聞いて、普通のナシゴレンと何が違うのと尋ねたところ、卵の目玉焼きを一つ載せたものだと説明してくれました。彼らはそれで明日の英気を養えると信じていたのです。

 毎年二桁の賃上げ続いていると言っても、2013年のジャカルタ周辺の最低賃金は月2万円です。まだまだ多少の作業環境の悪さや長時間労働による健康面の心配より、少しでも多くの賃金や手当をもらえる方を優先するものと思われます。事実、賃金値上げや雇用契約形態の見直しを求める労働組合のデモは多くても、安全衛生面での改善を求めるデモは聞いたことがありません。

 日本も高度成長期に入るまでは同じように、現金収入を上げることが大事で、安全衛生面についてはほとんど関心が払われなかったように記憶しています。しかし、衣食足りて礼を知るではありませんが、ある程度の収入が確保された時点から、作業環境についての要求が急に高まったのも事実です。

 インドネシアの高度成長を示す2000年を起点にしたGDPの右肩上がり直線と、日本の1965年を起点にした同様の直線はぴったり重なります。ということは、安全衛生や作業環境について、労働組合から改善要求が出て来るのはさほど遠い先のことではないと考えるべきでしょう。

 総選挙と大統領選挙のある2004年までは政府も労働組合の声に敏感に対応することでしょう。しかし、外国投資を必要とする事情から、その後も引き続きそうすることはないでしょう。そして、労働組合もそれに合わせて戦略を変えて来ることでしょう。日本の昭和時代にそのヒントがあるかもしれません。

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