インドネシア進出中小企業が知らずに犯しやすい違法行為
大企業は各分野の専門家が居て、コンプライアンス部門なども設置されているため問題になることは少ないのですが、中小企業の場合はなかなかそうもいかないため、知らずにインドネシアの法律を犯していることがあります。以下がそれらの事例ですが、不要なことでトラブルに巻き込まれて本業が停滞するようなことがないよう、気を付けて下さい。
①うちでは労働組合は作らせません
まだ労働組合が結成されていない会社の社長さんに、組合結成に向けた対策は何か実施していますか、と聞くと、うちの社員は労働組合は要らないと言っているし、ローカルの取締役も労働組合は作らせないと言っているので心配していません、と言う答えを時々聞きます。
インドネシアの労働組合法2000年第21号では、10人以上の従業員の合意があれば、彼らはいつでも労働組合を作る権利を持っており、会社はそれを拒否することは出来ません。もし、従業員に対して組合結成に対する圧力をかけているとすれば、それは労働組合法違反となります。
仮に従業員に組合結成の意志が無くても、地域の上部組織から強制的に作らされることは良くあります。そのような兆候を早目に掴んで、突然結成されても慌てることの無いように、普段から従業員代表と会社代表との定期的な懇親会は是非行っておくべきです。
②短期間の現場指導だから就労ビザは要らないだろう
外国人労働者に関する法律を読むと、全ての費用を本社が負担して、現地では報酬を全く貰わない場合は就労にはならないと解釈することも可能です。しかし、実際は収入の有無ではなく、工場の中で作業をしているか否かで判断されてしまいます。
費用全額本社負担による半年以下の短期的な現場支援であっても、駐在員と同様に、外国人労働者利用計画(RPTKA)の承認をもらい、滞在許可(KITAS)、就労許可(IMTA)を取得して仕事をしないと、最悪の場合は強制出国となり、二度とインドネシアには入国出来なくなります。
③親子ローンの金利を高くして投資回収の一部に充てる
インドネシアでの外国投資会社の最低投資総額は約1億円で、最低資本金はその1/4の約25百万円です。差額の75百万円は親子ローンとして日本から送金することが可能ですが、その金利は通常インドネシアで借りられる海外ローンのものを大きく上回ることは認められません。
④本社に利益が落ちるように取引価格を操作する
投資回収を早めるために、本社から輸出する部品や材料の価格を国際相場よりも高く設定したり、逆にインドネシア工場から日本に輸出される製品の価格を低く設定したりすることは、ある程度までは会社の方針として認められるでしょう。
しかし、それが度を超すとインドネシア国税庁から疑いの眼を向けられます。彼らはインドネシアの国庫に正当な税金を納めてもらうべく監視していますので、それを日本の国庫に不当に取られることを妨げようとします。
これがいわゆる移転価格問題で、脱税行為として追及されます。事前に公認会計士や税理士と良く相談して、適切な範囲内で価格の操作をすべきです。
⑤高価な試作品を旅行鞄に入れて運んだ
鞄に入る大きさだったので、日本へ出張する際に個人荷物として持ち帰り、代金は別と現地に送金した。経理処理は日本側では試作品代金支払、現地側では試作品代金収入として研究開発費用で計上した。
一見何も問題は無いように見えますが、これは明らかに密輸です。国境を越えて物を運ぶ時はどんなものであっても税関に申告して、必要であれば検査を受けて、場合によっては輸入税を支払わなくてはなりません。着替えなど私物であっても税関申告書に記入して提出するのはそのためです。
試作品であってもインドネシアから持ち出す場合は、その支払方法には関係なく、出国する前に税関において輸出申告などの手続きを行い、日本に到着した際には輸入申告をしなくてはなりません。場合によっては輸入税を支払うことも必要です。逆に、日本からインドネシアに何かを持ち出す場合も同様です。
⑥知り合いの会社に工場の空きスペースを貸している
インドネシア工場のスペースに余裕があるから、日本で知り合いの会社がインドネシアに進出する際に、スペースの一部を貸している。
これは会社法違反です。スペースの一部を貸し出すには会社定款に賃貸業が含まれていなくてはなりませんが、通常は製造業として投資認可や事業許可を得ているはずですから、インドネシア政府が認めた範囲外の事業を不法に行っていることになります。
本来はスペースを借りる知り合いの会社に資本参加してもらい、合弁会社の一員として事業を行うべきです。
⑦期間契約社員を5年以上使っている
期間契約社員の雇用期間を最長にするには、24ヶ月雇用、延長、24ヶ月雇用、1ヶ月の解雇、12ヶ月の再雇用というパターンが使えます。しかし、これを無視して5年以上使うことは労働法違反となります。
真面目で優秀な者は正社員に登用し、それに該当しない物は延長や最雇用のタイミングで解雇しなくてはなりません。名前の通り、あくまでも期間限定の仕事に充てた労働力であることを忘れてはなりません。
⑧断食期間中は食事手当を支払わない
断食期間中であっても昼食手当は支払う義務があります。現物支給の場合は現金に換えて支払うようになっています。本当の理由は知りませんが、断食は個人とアラーの神との約束事であり、労働法とは関係ないのかもしれません。それにインドネシアイスラム国家ではなく、全ての国民がイスラム教という訳でもありません。
⑨会社登記が済んだので商取引を始める
製造会社などの場合は会社登記が済んでから工場建設に入るため、工場が稼働して商品が出荷出来るまで半年以上の時間がかかります。その間の資金が勿体ないからと言って、現地の外注企業などから製品を仕入れて販売することは出来ません。
会社登記が済んで出来ることは、工場建設、機械手配、人員採用、材料調達など、事業を始めるための準備に限られ、それらの準備が整った段階で恒久事業許可が出されて初めて商取引が可能となります。
⑩会社定款はインドネシア語と英語のため何が書いてあるか良く判らない
どんなに小さい会社であってもインドネシアの会社法に定められた規定が掲載されています。例えば年一回の株主総会の開催はどうしていますか。少なくとも開催したことにして、議事録は作っていますか。