インドネシア進出、成功と失敗の分岐点-15 従業員の定着
インドネシアに進出した中小企業の社長さんから『丹精込めて育成した社員が高い給料で大手企業に引き抜かれてしまいガックリ来ている。しかし、うちにはそんな高給を支払う余裕もないので・・・』と言った嘆きを時々聞かされます。
しかし、ちょっと待って下さい。その社員はただ少し多いお金のためだけに転職したのでしょうか?これまで育ててくれた会社に対しての感謝の気持ちは全く無かったのでしょうか?せっかく覚えた仕事からまた新しい仕事に移ることに対する不安は無かったのでしょうか?慣れ親しんだ職場仲間から離れて知らない環境に飛び込むことに不安はなかったのでしょうか?きっとあったはずです。
では、どうして転職に踏み切ったのでしょうか。考えられることは将来に対する不安ではないでしょうか。今の会社は居心地は悪くはないが、それよりももっと大きな会社にいた方が安泰ではないかと考えたかもしれません。例えば従業員が30人の小さな工場よりも、数百人、数千人の規模で広く大きな工場の方が将来も安心だと、誰でも感じるのはないでしょうか。もしその会社が有名ブランドの商品を扱っているとしたら尚更でしょう。
では小さな会社は何も打つ手は無く、ただ見送るしかないのでしょうか。そんなことはありません。今は工場は小さく、社員が少なくても、将来に向けた大きな夢を持たせることは出来ます。私は社長や工場長の最大の仕事は従業員に対して常に夢を語ることだと昔から考えていました。3年後には、5年後には、10年後には、20年後には、30年後にはこの会社をこのようにするんだ、そのために皆でこんなことをしよう!!と毎週始めの朝礼で語っていました。
但し、通訳を介しての話ではなく、インドネシア語で直接語ることが大事だと確信し、そのためにインドネシア語を勉強しました。従業員にインドネシア語で夢を熱く語る社長や工場長・・・これが定着の大きな要因だと思います。従業員が定着すれば技術や技能が向上し、そして生産性が高まり必ずや企業業績にも貢献すると考えています。高度経済成長時代の日本がそのことを実証しているではありませんか。