なぜ『インドネシア』なのですか?
インドネシア進出の動機を尋ねる理由は幾つかあります。
一つ目は日本国内ではなく海外に投資する理由です。インドネシアに限らず海外投資をすることで、どれほどのメリットがあるのでしょうか?
二つ目は進出先をインドネシアにした理由です。インドネシアに投資することで、どれほどのメリットがあるのでしょうか?
三つ目は進出形態を独資、または合弁にした理由です。独資または合弁にすることで、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
残念ながらこれらの質問に対して納得のいく回答を頂いたことは一度もありません。何故なら、ほとんどの回答は定性的な概念(または思い込み)を主張するだけで、定量的な検討や調査をしていないからです。
これを言うと、『現地で買える材料の価格は調べた』、『現地の労務費は確認した』、『現地での競合の販売価格は調査した』などの反論が出て来ることでしょう。
しかし、それらのデータを基に最低でも5年間の財務会計のシミュレーションはしたのでしょうか?その試算によると投資回収期間は何年でしょうか?利益が出るのは何年目からで利益率はどれほどでしょうか?その数字で合弁相手先は納得するのでしょうか?
これらの判断はどんぶり勘定ではまず無理です。投資計画、売上計画、人員計画、資金計画、損益計画、原価計画、残高計画を詳細にわたり計算しないと判らない数字です。
5年先までの売上計画など判る訳ないではないかと仰るかもしれませんが、これは投資回収や利益確保の目標を達成するためにはどれだけの売上が必要なのかという、最も大事な事業目標となる数字です。
もしも『数字をいくらいじっても意味がない』と考えるのであれば、この時点で海外進出は止めた方が良いでしょう。この数字を実現するためにどのような施策を打てば良いのか、そのためのリソースを自社で用意出来るのか。それが可能であると判断されたならばGOです。
もしインドネシア進出で可能性が無いのであれば他の国も同様に検討してみるべきでしょう。アセアン諸国の間でも投資環境は色々と異なりますからもっと良い進出先があるかもしれません。しかし、定性的な概念で判断するのではなく、緻密な試算に基づいた定量的な見通しに基づいて判断することを怠ってはなりません。
もしも社内のリソースが足りなくて進出が難しい場合は独資に拘らず、合弁の形を取ることも一つの選択肢です。しかし、合弁事業はリスクが何倍にもなるため、余計に緻密な試算に基づいた定量的な見通しに基づいて話を進めなくてはなりません。定性的な概念で、ましてや第一印象で決めてしまうなどは、飲み屋で知り合った女性と翌日に結婚するようなものです。しかし実際はこのようなパターンが結構あるのです・・・。
全ての要因を数字に置き換えてみて経営が成り立つのかどうか(定量分析)、その数字を実現するための施策とリソースがあるのかどうか(定性分析)、この組み合わせが大事なのです。決して定性分析のみで、ましてや社長の勘と度胸で判断することのないよう注意して下さい。
『日本ではそんな面倒臭いことはしたことがないが、ちゃんと会社は成り立っている』と仰るかもしれません。確かに仰る通りでしょうが、日本は中小企業を支援するための社会インフラが整っているのです。ですから中小企業の皆さんは得意分野に専念出来て、それが日本のものつくりを支えているのです。
しかし海外では、少なくともインドネシアではそうは行きません。企業としての理論武装をしないととても危険です。