自前の工場にしますか、それともレンタル工場?
インドネシアで製造活動を始めるに際し、土地利用権を買って自前工場を建てるのが良いのか、それとも既存のレンタル工場を借りるのが良いのか比較検討することが必要です。
しかし、もしも以下の様な前提に当てはまるのであればレンタル工場を利用すべきと考えます。
1.建屋の床面積は1,000㎡もあれば十分である。
2.床強度が3ton/㎡を超える様な機械は使わない。
3.敷地内に処理施設が必要となる有害排水は出さない。
4.作業場と事務所の改装に多額の費用を必要としない。
5.隣接する他社に迷惑を及ぼすような振動や騒音は出さない。
逆に以下の様な前提に当てはまるのであれば自前の工場を建てるべきです。
1.数年で事業を閉じて引き揚げることは考えられない。
2.立上当初は小さな工場でも良いが、数年後には事業拡大を考えている。
3.土地取得費用と工場建設費用の総額が5年間のレンタル費用総額よりも少ない。
4.床強度、梁高さ、振動、騒音、排水処理に特別な工事が必要である。
レンタル工場を借りる場合は契約時に下記の条件について詳しく確認し、後からそんなことは聞いていない、なんてことが起きないようにすることが必要です。
物件について
1.入居可能時期(オーナーが取得すべき許認可が残っているなど)
2.状態(建屋の保全レベルが酷い状態のものがある)
3.面積 (間口、奥行)
4.梁高さ(クレーンを設置する場合は特に注意)
5.床強度
6.主要構造(基礎、床、柱、屋根、外装仕上)
7.排水規制
8.インフラ(電気、水道、附帯設備、事務所、トイレなど)
9.地域全体の警備(複数のレンタル工場が一区画内に存在する場合)
10.物件数(オーナーが所有する数)
11.完売目標(新規にいくつかの物件を売り出している場合)
予約条件について
1.仮契約者(現地法人が設立される以前は日本本社でも可能か)
2.手付金(賃貸料金に含まれるのか)
3.頭金(賃貸料金に含まれるのか)
4.正式契約までの期限(通常は正式契約時点から賃貸料金が発生するが、実際の入居時期との整合性は)
契約条件について
1.契約期間(契約年数に応じてディスカウントはあるのか)
2.レンタル料金(契約期間中は変更なしか)
3.支払方法(一括払いに対してディスカウントはあるのか)
4.分割支払の有無
5.追加費用
6.管理料金(通常は敷地面積当たりの月額価格)
7.契約終了時の原状復帰範囲
次に自前の工場を建てる場合の用地取得についてですが、インドネシアの場合、外国資本企業は土地そのものを取得することは出来ません(出来るのは日本くらいのものです)。
外国資本企業が取得出来るのは土地利用権の一つである建設利用権(インドネシア語でHGB:Hak Guna Bangunan)です。この権利は30年間ですが、その後は20年間の自動延長、そしてさらに30年間の更新が可能と言われています。但し、最初の30年間の内既に10年間を他の用途に使われている場合は残りの20年間のみが有効となります。
インドネシア政府機関や日本の支援機関に相談して土地を探す場合、通常は工業団地内の物件を薦められます。既成の視察ツアーに参加して見学出来るのも工業団地内の土地です。
工業団地内の土地は許認可取得が少ない、環境対策が整っている、治安が保証されているなどのメリットがある反面、普通の工場用地に比べて値段が高いのが資金力の弱い中小企業にとって敷居が高く、色々な面で不便な思いをする普通の工場用地を選択するケースが多くあります。
また、材料調達、外注活用、商品納入からなるサプライチェーンの観点から最適なロケーションは何処なのかを検討することも忘れてはいけません。人材採用の面では、ジャワ島内である限りはロケーションの都合で大きく影響することは無いと言えます。従って、最初から工業団地ありきで検討する必要は無いと考えて良いでしょう。
土地が決まると次は工場建設となりますが、建屋そのものは雨を凌げれば良いレベルから、全館空調のハイレベルまで価格は千差万別となります。もちろんローカル業者の中には値段が非常に安いところもありますが、品質、納期の面で最初から過剰期待を持たないことが前提となります。
但し、建屋そのものは安くても値段に合った品質であれば良いのですが、地盤調査をいい加減に行い、基礎工事もそれに合わせていい加減に済ませると、床が波打ち作業が出来ない、柱が傾いて扉が開かないなど、後から取り返しのつかない事態も起きてしまうので、妥協出来るところと出来ないところは最初から決めておくことが肝要です。どうしても心配な場合は、日本人が駐在している中堅の日系ゼネコンに発注することをお薦めします。
インドネシアでの建設工事で気を付けなくてはいけないことは、9月頃から3月頃にかけての雨期による進捗の遅れと、毎年12日前後で反時計回りでずれていくイスラムの断食とそのあとの大祭の、一ヶ月以上にわたり続く稼働時間と稼働日数の減少です。この二つは工期に大きな影響を与えるので決して無視してはいけません。