工場建設に際しての注意事項
自前の工場を建てる際の注意事項について、建設工事の一連のプロセスに沿って少し詳しく述べてみたいと思います。
①見積依頼仕様書作成
三社以上のゼネコンに対して相見積を依頼することが望ましいのですが、依頼するための要件書としての仕様書は出来るだけ詳しいことに間違いはありません。
しかしながら、大手企業のように社内に建設の専門家が居れば良いのですが、中小企業でその種の専門家を抱えているところは稀と言って良いでしょう。
そのため多くの事例では社長自ら作成することになるのですが、専門家レベルでなくても良いので、最低以下の資料は用意することが大事です。
01.本社および現地法人の会社概要、連絡先
02.現地での事業計画概要(特に何を作るのかが大事)
03.事業の立上日程計画とそれに合わせた建設日程計画(見積書提出期限も含む事業主の希望)
04.工事発注の範囲(設計、許認可、基礎、外構、建屋、電気、エア、水道、照明、什器など細かいところで後から食い違いが出ないようにしておくこと)
05.建設用地のロケーション地図(詳細な住所と案内となりうる目標物など)
06.建設用地の土地図面(寸法、周囲の道路や用水路、地面の高さ、土地登記書の添付図など)
07.建屋配置図(工場、守衛所、車庫、駐輪場、危険物倉庫、構内道路など)
08.建屋立体図(左右前後および上からの外観図)
09.建屋断面図(任意の位置での左右前後)
10.建屋内の機械・設備レイアウト図(電気配線、エア配管、水道配管も含む)
11.建屋内の機械・設備の電力容量リスト
12.事務所のレイアウト図
13.収容人員の最大値
だいたい以上のような資料が準備出来たところで競争入札に参加して欲しいゼネコンに入札説明会の案内を出します。入札説明会への参加ゼネコンにローカル企業が含まれる場合は全ての資料について英語版も用意しなくてはなりません。最初から英語版だけで作成しておけば日系ゼネコンに対してもそれだけで対応可能です。
これらの要件に対して各ゼネコンから提案書が出されますが、その途中で色々な質問が寄せられます。それらの質問に対して回答するのは当然ですが、質問の量と内容によりそのゼネコンのレベルがある程度事前に推し量られます。
全く質問が無いゼネコンは良く理解しているのではなく、勝手な自己判断で適当な工事をすると考えた方が良いようです。
見積提出期限になっても提案書を出して来ないゼネコンは納期を守れない会社として、その時点で入札から外すべきです。
各社から出て来た提案書を評価する際には価格が最も重要ですが、請負の範囲がこちらの思惑と合っていることが大前提です。本来行うべき工事が抜けていて他社よりも安いことが時々ありますので要注意です。
次に重要なことは納期です。工事着手前の設計や許認可手続きの時間が含まれているのか、雨期や断食の影響を勘案しているのかを確認します。
その次に建築物あるいは工事そのものの品質を評価しなくてはなりませんが、これは素人にはなかなか難しい問題で、出来れば専門家のアドバイスを受けることを薦めます。
工事期間中は出来るだけ時間を見付けて、図面を片手に現場を見回ることが肝要です。仮に日系のゼネコンであっても実際に工事を担当しているのは地場の土建会社や建設会社であるため、事業主が図面片手に見回るだけで手抜き工事に対する牽制効果があります。実際に手抜き工事を発見することもあります。
工場建屋建設工事の進捗に同期させて機械や設備の調達を手配しなくてはなりませんが、特に輸入する場合は綿密な準備が要求されます。これについては生産設備のページで別途詳しく述べたいと思います。
工事の始まりと終わりのタイミングでは以下の様な催事が行われますが、事業の規模や対外的な付き合いの度合いにより開催の是非と内容を決めれば良いと思います。
1.起工式(安全祈願祭または地鎮祭とも呼ばれる):最初の柱を立てるタイミングで、工事関係者に限定してゼネコンが主導して行うことが多い。
2.竣工式:建物が完成したタイミングで行うが、後述の開所式と合わせて行う方が世の中に対する周知度は高くなります。
3.開所式:建物が完成し、機械設備も稼働した状態で、最初の製品を出荷するタイミングで行うのがインパクトが強い。政府高官、取引業者、同業者などを招待し、イベント専門業者に企画運営を委託して華やかに行うことは何よりの宣伝効果が期待出来ます。準備期間としては3ヶ月以上を見込んでおくことが必要です。