色々と大変な輸入の手続き
1980年代以前のインドネシアでの仕事で一番厄介なことは輸入手続きだったと確信を持って言えます。一つの貨物を輸入するのに35ヶ所の関係部門で認可を取得しなくてはならず、そのための時間と労力、そして袖の下は気が遠くなるようなものでした。35ヶ所の中で割と重要な位置にいるお役人が休暇で海外旅行に出かけているためサインがもらえず、輸入材が途絶えて1ヶ月近く生産活動が止まったことは一生忘れられない思い出です。
あれから30年が経ち、輸入制度も年々簡素化され、税関の規律も改善されて今では大分スムーズに輸入手続きが進んでいるようですが、それでもなおインドネシアの輸入制度には色々な問題が潜んでいますので要注意です。
インドネシアで製造会社を設立して何かを輸入する場合に関わる手続きは①輸入業者登録、②輸入税減免特典、③中古機械輸入許可、④特恵関税の適用ですので、これらについて説明したいと思います。輸入した材料を加工して再輸出する場合については別のページで述べたいと思います。
①輸入業者登録
インドネシアにおいて生産活動や販売活動をする場合、全く輸入材(設備ならびに材料)に頼らないことは稀であると思います。従ってほとんど全ての日系企業は会社設立の際に輸入業者登録を行い、必要な設備、機械、工具あるいは材料や部品を日本や海外から輸入出来るようにしておきます。
しかし勘違いしてはいけないのですが、輸入業者として登録されたから何でも輸入出来るのではなく、認可された事業に必要なものに限り輸入出来るのです。
それでは色々な事業の認可を取っておけば良いのかとなるのですが、外資企業(1ルピアでも外国資本が入ると外資企業)の場合は一つの企業は一つの事業しか認可されないのでそれは無理です。
それに対して内資企業(資本金の100%がインドネシアの個人または法人によるもの)は自由に事業を登録出来ることから、インドネシアはまだまだ外資に対する差別が大きいとつくづく感じさせられます。
②輸入税減免特典
インドネシアに投資してくれたことに対する特典として、投資金額のうちの設備機械分については、マスターリストと呼ばれる制度を利用することで、インドネシア国内で調達出来ない品目に限り、輸入する際の輸入税が免除または軽減されます。
また、それらの機械設備を使って加工される対象の輸入材料も、同様にマスターリストと呼ばれる制度を利用することで、インドネシア国内で調達出来ない品目に限り、機械設備が設置された後の2年間に限り輸入税が免除または軽減されます。
但し、減免されるのは輸入税だけであり、輸入の際に賦課される輸入時付加価値税VATならびに前払法人税は対象になりませんので資金繰り計画の際には注意しなくてはなりません。
③中古機械輸入許可
当初の投資負担を減らすために中古機械を調達することは可能です。但し一般的には使用年数が20年未満で、現地においても規定の耐用年数に対応出来ることが条件となり、そのための審査を通らなくてはなりません。
④特恵関税の適用
インドネシアは多くの国々と二国間自由貿易協定を結んでいるので、その協定品目に該当するものは輸入税の減免を受けられます。
また、アセアン諸国間は基本的に輸入税は撤廃されていますので、マレーシア、タイ、フィリピン、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーからの輸入品には輸入税はかかりません。
さらにアセアンが各国と結んでいる自由貿易協定もあり、それに該当する場合でも輸入税の減免を受けられます。
上述のマスターリスト制度は書類の準備が煩雑ですが、特恵関税を利用する場合は原産地証明があれば良いので、双方の減免率を比較して楽で有利な方を選ぶべきですが、その際には日本からの輸出手続き、あるいは現地での輸入手続きを代行してくれる乙仲と良く相談することが必要です。