現地社員が辞めずに育つ仕組み
社員の数が多い少ないに関係なく、実際に日々の仕事を回して行くのは日本人駐在員ではなく、インドネシア人の社員であることは今更言うまでもありません。
日本人駐在員は通常は数年で交代するのですが、インドネシア人社員には定年まで働いてもらい、現地法人の発展のために尽くして欲しいと願うのは当然のことと思います。
特に優秀な人材ほど引き抜きの対象となり、中小企業の場合は大手企業からの引き抜きに対して、給与の面では叶わないと言うのが実態です。
ここで大事なことは、会社は勤勉な社員を公正に評価し、能力向上の努力と成果に対して正当に報いるということを明確に示し、彼らが定年まで安心して働ける環境を作ることです。
そのためにまず必要なものは賃金と手当の標準テーブルです。職種、等級別の最低保証金額を明示することで各自の努力目標が見えて来るのではないでしょうか。インドネシアでは各自の給与情報が取り交わされているのが普通ですので、敢えて隠しておく意味は無いと思います。また、このテーブルの開示は2017年10月から労働法で義務付けられています。テーブルは最低賃金の改訂、物価変動、会社の業績に合わせて毎年見直しされます。
次に、社員各自がこのテーブルのどこに該当するのかを決めるために、人事評価システムが必要となります。勤務態度、勤務実績、業務能力、関連資格などに基づきルールを作りますが、本社の評価システムを参考にすることも可能です。この評価システムも2017年10月から労働法で開示することが義務付けられています。
ここで忘れていけないことは、この評価システムの中に自己啓発のための機会を会社が用意して、その成果を正当に評価されるようにしておくことです。自己啓発の機会には、例えば日本での研修、現地での社外研修への参加、社内で行われる研修への参加などがあります。
そして社員として守らなくてはいけない就業規則の制定です。就業規則には最低限、労働法の条項を盛り込む必要がありますが、労働法に反しない限り出来るだけ多くの事例を盛り込むと社員の理解を得易いと思われます。
以上のことを条件として採用の際に雇用契約を文書で結ぶことが本来の形なのですが、これらの必要性を理解していない会社が多く見受けられます。おそらく法律により定められた書類くらいに捉えているのかもしれませんが、そうだとしたら大きな間違いです。これらは優秀なインドネシア人社員を育成するための、大事な大事な仕組みなのです。