2021.11.21
最近のニュースに私的コメント
庶民出身の大統領から庶民派を装う大統領に変貌か
中部ジャワ州ソロ市の家具製造会社で財を成し、2005年にソロ市長、2012年に首都ジャカルタ州知事、そして2014年には第7代のインドネシア共和国大統領へと駈け上りました。
ソロ市長の頃から現場に足を運び庶民の声に耳を傾ける政治家として評価され、ジャカルタ州知事の時代は、副知事に指名した華人系インドネシア人のアホック氏との二人三脚で、これまでの歴代の州知事が実質的に放置して来た洪水問題や渋滞問題に真剣に取り組み、ジャカルタ市民からは大きな声援を得ました。
その勢いで挑戦した2014年の大統領選挙では、絶大な政治力と資金力を持つ、第2代大統領スハルト氏の元娘婿で、元陸軍特殊部隊司令長官であったプラボウォ氏との接戦を、草の根の支援勢力を得て制して見事勝利しました。
庶民派としての名声を掲げた大統領に大きな期待を寄せた国民は多かったでしょう。
しかし、庶民派であることは特に国政においては政治基盤の弱さを露呈し、ジャカルタ州知事時代からの支持基盤であるインドネシア闘争民主党(PDI-P)の党首、メガワティ氏には逆らえない様子が窺えました。
メガワティ氏は初代大統領スカルノ氏の長女であり、第5代大統領も経験した筋金入りの政治家で、彼女の娘も現在は国民代表議会の議長を務めるほどで、インドネシア政界を裏で操るボスと言っても差し支えないでしょう。
大統領としての2014年から2019年の第一期中は、ジャカルタ州知事の後を継いだアホック氏の宗教スキャンダルによる失脚と投獄と言うピンチもありましたが、なんとか巻き添えにならずに難局を乗り越えました。
しかし二期目の2019年以降はコロナ禍に襲われ、ワクチン接種の進展の遅さに対する批判だけでなく、独立100周年である2045年に向けて打ち上げた国家目標の、東部カリマンタン州への首都移転計画、世界第5位の経済大国実現、電気自動車の一大生産国の達成等が危ぶまれるようになりました。
また、明らかに政治的駆け引きの結果と思われる汚職撲滅委員会(KPK)の弱体化や、雇用創出の名の下に施行された、いわゆるオムニバス法による投資促進のための労働者への皺寄せなど、庶民の不満と怒りを買う政策も目に付き始めました。
それを少しでも緩和することが狙いなのか、最近のニュースに登場するジョコウィ大統領は、庶民派を装うパフォーマンスが多過ぎる様な気がしてなりません。
間違っても憲法を修正して大統領の任期を2期から3期に延ばすようなことをしたら、30年間の独裁政権を支配した第二のスハルトとしての名を遺すことになるでしょう。
どこかの国でも第二の毛沢東を目指している御仁がいるようですが、そうならないことを願っています。
それにしても、彼らに比べたら昨今の日本の政治家は本当につまらない人物ばかりです。