2023.04.26
コンサルタントの独り言
まやかしの技能実習制度廃止
日本政府はアメリカ政府から『人身売買』と批判されている技能実習制度の廃止に向けた準備を進めているとのことです。
しかし、この分野に詳しい人達に言わせると、それはまやかしであり、実態は特定技能制度への全面的な移行に過ぎないようです。
特定技能制度は1号と2号があり、技能実習生として3年間あるいは5年間を終了した者は自動的に特定技能1号になれます。
特定技能1号は5年間で技能実習生に比べて規制は緩いのですが、その後に2号の資格を取ると滞在期間を含めた規制はほぼ無くなり、実質的に外国人労働者として働けることになります。
現在、技能実習生は全国に約30万人存在し、その半数はベトナム人です。
日本政府は新しい制度の下で、『実質的な外国人労働者』を100万人まで増やしたいのが本音のようです。
私は以前から技能実習制度や特定技能制度には以下のような理由で反対の立場でした。
1.当面の労働力不足を補うための短絡的な政策であり、労働力不足を解消するための日本人労働者の昇給、正規雇用、人材投資などに繋がる政策は全く取って来なかった。
2.アメリカやヨーロッパの歴史を見ても、移民導入で自国民と移民の双方が幸せになった例は無く、その反対の悲惨な歴史ばかりである。
3.『実質的な外国人労働者』を希望しているのは、長期的な人材確保や人材育成を怠って来た経済界であり、彼らは日本国民の将来のことよりも、目先の利益が最優先である。
江戸時代の社会制度であった『士農工商』は階級制度と言うよりは、役割分担制度であったと思います。
『士』は現在の政治家ですが、基本的に志が高く富を求めることは恥としていました。
『農』と『工』は現在のほとんどの一般国民で、『士』の庇護の下に暮らしていました。
『商』は現在の資本家で、金儲けは認められていました。
江戸時代はこれらの役割分担が上手く機能していたと思われますが、現在は『商』が全てに優先され、その一つの結果が『実質的な外国人労働者』を必要とする社会であると思います。
1970年代から80年代にかけて、浜松市内に『日本インドネシア技術交流協会』と称する社団法人がありました。
大東亜戦争の時にジャワ島に駐留した浜松出身の兵士が帰国後に、当時お世話になったインドネシアの人達に報いたいと考え、知り合いの地元の中小企業のオーナーに声をかけて、インドネシアの若者を工場に迎え入れて技能と日本語を教えたのです。
当時はインドネシア政府からも非常に感謝され、会員企業のオーナー一行がインドネシアを訪問した際には大歓迎を受けたと聞いています。
その後は技能実習制度へと展開して行ったのかもしれませんが、平成以降の日本はこの分野でも本当の日本人らしさを失ってしまったようです。